マニアックすぎる微量栄養素欠乏の世界

トピック
こんにちは、管理栄養士の中島です。
今回はかなりマニアック(限りなく医療者向けに近い)な話をします。
僕は病院で働いている管理栄養士の中ではビタミンやミネラルオタクでもあります。
入院患者さんの栄養を見るときに、生活背景、食習慣、データ、必要に応じて患者さんのもとへ行って身体所見を確認しながら
水溶性ビタミン → | ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、C、ナイアシン |
脂溶性ビタミン → | ビタミンA、D、E、K |
ミネラル → | 鉄、銅、亜鉛、(セレン) |
これらの栄養の欠乏がないか確認することに至福の喜びを感じています。
どういう場合に栄養素の欠乏がおこりやすいか
- アルコールを大量に飲まれる方(摂取不足・消費の亢進 B1、B6、B12、葉酸、ナイアシン)
- 胃や小腸、膵臓の手術をされたことがある方(吸収不良 B12、葉酸、ミネラル全般)
- 摂食障害、下剤や繊維などを乱用し常時下痢気味の方(摂取・吸収不良 すべての栄養素欠乏のリスク)
- 動物性食品を一切食べない菜食主義の方(摂取不足 B12、ミネラル全般)
- 特定のミネラルのサプリメントを長期でたくさん飲んでいる方(亜鉛と銅が吸収を競合するなど)
- ビタミンの欠乏を起こしやすい薬剤を飲んでいる方・一種類の栄養剤、または点滴で長期に栄養を摂っている方(セレン)
etc.
これらの方で、不足しやすい栄養素による症状があるかもしれないというときに詳しく食習慣の確認と身体所見を確認しにいきます。
どういう症状や疾患が有名か
脚気(B1)、ウェルニッケ・コルサコフ症候群(B1)、大球性貧血(B12、葉酸、セレン)、小球性貧血(鉄)、亜急性連合性脊髄変性症(B12)、壊血病(C)、貧血全般(B2、銅、亜鉛、E)、ペラグラ(ナイアシン/トリプトファン)、低Ca血症(D)、骨粗しょう症(D)、血液凝固の延長(K)、しびれやふらつき、腱反射や振動覚の消失(B1・B6・B12・E・銅)、味覚障害(亜鉛)、心筋症(セレン)
※栄養性でおこることわかっている疾患や症状ですが、これらで出現する症状は、栄養以外の疾患で起こっていることのほうが多いので、食生活背景や原疾患の治療状況を確認しながら、主治医の先生や薬剤師、リハビリスタッフと相談することがあります。
豆知識
- B12と葉酸の両方が不足しているときは必ずB12を先に補充
- 鉄はフェリチンやTIBC、UIBC、B12と葉酸はホモシステイン、銅はセルロプラスミン、亜鉛はアルカリフォスファターゼもセットで覚える
どうやって良くしていくか
- 緊急や重症なものは注射、処方など1点集中で補充されることがあります
- 多くの場合、複数の栄養素が不足するので、入院中などは総合的にビタミン・ミネラル(薄く広く)強化された栄養剤がだされることがあります
- 食生活のお話をすることもあります
結論
- 入院中に栄養剤やビタミン剤がでたらちゃんと飲もう。(飲みにくかったら相談してください)
- 極端な菜食主義やおかずを食べずにアルコールは危険すぎるのでやめましょう。お肉大事。(どうしてもやめられない方は相談してください)
- サプリメントなど飲まれている方は医療スタッフにきちんと伝えよう(栄養素の吸収阻害することもあれば、ビタミンがお薬の効果を邪魔することもある)
もっと知りたい方
- ESPEN micronutrient guideline(ヨーロッパ臨床栄養代謝学会の微量栄養素ガイドライン2022)
- 日本臨床栄養学会 亜鉛欠乏症、セレン欠乏症診療指針
がオススメ!