だまされたっていいじゃない!冷たく感じれば⁈

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暑い日が続いていますね。

突然ですが、私はハッカやミントなど、いわゆるメントール(メンソールとも言いますね)の香りとスースー感(冷感)が苦手です。その理由は明確で、私の故郷はハッカ(薄荷)の生産で有名な田舎町。しかも、当時の実家はハッカ工場の真隣にあり、蒸留のたびにあの香りを嗅ぎ続けていたのです。そんな私が書くコラムですので、少しネガティブな視点が含まれることをご了承ください。

夏が近づくと、冷感スプレーや制汗剤はもちろん、汗拭きシートや洗顔フォーム、シャンプー、ボディソープなど、特に男性向けを中心にメントール配合の製品が数多く登場します。

スースーして冷たく感じることで清涼感を得られるのが魅力かと思いますが、ちょっと待ってください。メントールで本当に体が冷たくなっているのでしょうか? 体温は下がっているのでしょうか?

答えは“No”です。実際に皮膚が冷たくなっているわけではなく、冷たいと「感じて」いるだけなのです。

ではなぜ、メントールは氷のように冷たくないのに、皮膚に触れると冷たく感じるのでしょうか?

現在のところ、冷却刺激に反応する皮膚や粘膜上のセンサー(受容体)が、メントールによっても同様に刺激されることが原因と考えられています。

つまり、実際に体が冷えているわけではないため、本当に体を冷やしたいときには、保冷剤や氷嚢など物理的に冷たいものを使って、首や脇の下、足の付け根など太い血管が通っている部位を冷やすのが効果的です。

ちなみに、エタノールなどのアルコール消毒剤がスースー冷たく感じるのは、蒸発する際に接しているモノから熱(気化熱)を奪うためで、実際に皮膚の表面温度は下がっています。

メントールには冷感だけでなく、皮膚の感覚を軽く麻痺させる作用もあります(もちろん感覚は元に戻ります)。この作用を利用しているのが、虫刺され用のかゆみ止めです。

また、メントールには胃腸の働きを活性化させる作用もあり、胃腸薬の成分としても使われています。医薬品では湿布薬にもよく含まれていますね。さらに、ガムや飴、ハーブティーなど、多くの食品にも利用されています。

改めて考えてみると、メントールって実に万能ですね。苦手とか言っている私ですが、居酒屋で白○ハイボールにミントの葉が一枚グラスに添えられていると、その爽やかな香りに思わず笑顔になっている自分がいたりして……。

薬剤部部長 本多秀俊

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