どんな場所で最期を迎えたいか

トピック

最期の場所のイメージ

人生の最期の瞬間、どんな場所で最期を迎えたいかと問われたとき、まず私の心に浮かぶのは、荒波が打ち寄せる海辺の景色が窓の外に見える病院の一室です。このイメージは極めて具体的なものです。私は27歳から29歳の3年間、茨城県の日立製作所日立総合病院に勤務していた時、医療支援で近隣の日立多賀総合病院を何度か訪れました。日立多賀総合病院には広い特別個室があり、大きな窓の向こうに、荒い波が打ち寄せる浜辺と海が横たわっていました。いつまで見ていても飽きないような、まさに絶景であり、その時(27歳にして)、ふと「最期を迎える時は、ここがいいな」と思ったのです。

その後の日立多賀総合病院

在りし日の日立多賀総合病院
在りし日の日立多賀総合病院

私が最期を迎えるはずだった?日立多賀総合病院は、その後、日立総合病院附属多賀クリニックと改称し、ついに2022年3月末をもって閉院しました。幸いなことに私の方が長生きしてしまいました。どこの病院も時代の流れの中で統廃合が進む中、比較的辺鄙な海辺にあるこの病院(クリニック)が消えていかざるを得なかったのは、無理もないところです。

在宅医療

日立総合病院以来、多数の病院に勤務し、多くの患者さんの最期を見てきましたが、最期の時を迎えるまでの過程はなかなか一筋縄ではいかない苦労の多いものであることを知りました。自分自身も若い頃には経験することのなかった苦痛も経験するようになり、日立多賀病院の絶景の一室に横たわるよりも、もっと現実的に、苦痛から解き放たれた居心地の良い、穏やかな場所がよいなと感じるようになりました。ほんのちょっとの期間ではありますが、在宅医療を経験して感じたことは、在宅医療を受けて自宅で家族に看取られながら最期を迎えるのは、とてもよい選択肢であるのは間違いないのですが、中にはなかなか難しい状況になり、不安と苦痛で本人およびご家族が苦労される場合もあるという現実でした。

大森日赤の緩和病棟

大森赤十字病院に着任して最初に行ったことが、緩和病棟の設立です。幸運なことに、熱心なスタッフに恵まれ、順調に運営されています。廊下が広くゆったりしており、窓の外には絶景の海は広がっていませんが、季節の花を飾っています。

茅根先生や緩和病棟(PCU)の看護師さんからヘルスケア・エッセンスにたくさんの投稿があり、その情熱を感じていただけると幸いです。

Web上でヒットする人気の高い選択肢

ところで、私の個人的な経験や思いはさておき、一般的に人生の最期を迎える場所として人気の高い場所には、以下のようなものが挙げられます。

自宅

家族や親しい人々と過ごせる安心感や、自分が慣れ親しんだ環境で過ごせることが理由で、自宅での最期を希望する人が多いです。それをサポートする在宅医療も発展してきています

– ホスピス

専門的な医療ケアと心のサポートを受けられる場所で、快適で尊厳のある最期を迎えるための施設です。痛みの管理や精神的なサポートが充実しています。

– 緩和ケア病棟

病院内に設置されている緩和ケア専門の病棟で、ホスピスと同様の専門的なケアと病院としての多様な診療科のサポートを受けることができます。

– 高齢者施設や老人ホーム

継続的な介護が必要な場合、高齢者施設や老人ホームで最期を迎えることもあります。介護スタッフのサポートを受けながら過ごせるのが利点です。

– 自然の中

海辺や山中などの自然に囲まれた場所(施設)で最期を迎えることを希望する人もいます。自然の美しさや静けさを感じながら、安らかに過ごしたいとの願いが込められています。ただ、現実的には、家族の希望等も満たしたうえで、そのような施設を見つけることは、現代の日本ではなかなか難しい状況となっています。

エッセンス

「どんな場所で最期を迎えたいか」は、その時が近づくにつれて、年齢、個人の経験や価値観、家族の状況、健康状態に応じて選ばれるものです。それぞれの選択肢の特徴をあらかじめ知っておくことは、選択に当たってとても重要なことだと思われます。

院長 橋口陽二郎

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