大腸内視鏡検査で痛い思いをしないためのエッセンス

トピック

私は下部消化管(大腸)を専門とする外科医ですが、日本消化器内視鏡学会の専門医、指導医でもあり、20年以上にわたって所沢市の肛門病院で週に1回、1日 10件程度の大腸内視鏡検査を行っていました。トータルでおよそ1万件程度を経験したことになります。ほとんどのケースを無麻酔で行っていました。

大腸内視鏡検査は、不快で痛みを感じることがありますが、検査時の痛みを決める大きな要素は以下の3点です。

  1. 医師の挿入技術
  2. 患者さんの条件(大腸の長さ・屈曲・癒着、痛みに敏感かどうか、腸の前処置は十分か)
  3. 麻酔の有無と方法

医師の挿入技術の進歩

大腸内視鏡検査の挿入技術は胃カメラとは違い、かなり難しく熟練を要します。私が初めて大腸内視鏡検査を研修し始めた頃は、ループ法といって内視鏡を押し込んでお腹の中でループを作り、下行結腸まで入れておいてからループを解除して、さらに先に進めるという方法が主流でしたが、それではループを形成する段階で患者さんは結構お腹の張りや痛みを感じます。その後、ループを作らずに入れる軸保持短縮法という挿入法が開発され、それが主流となりました。さらに、空気をほとんど入れずに大腸を短縮しながら入れる方法が普及し、熟練した術者によれば、患者さんによっては無麻酔でもあまり痛みを感じさせることなく挿入することが可能となっています。

患者さんの要因

大腸の長さ、走行には個人差が多く、長くて複雑な走行をしている患者さんや手術歴があって癒着のある患者さんでは、無痛で挿入することが難しくなります。さらに、痛みに関する敏感さについては個人差が大きく、過敏な方の場合、医師側としては、大変スムーズに挿入できて、苦痛も少ないだろうと思われる状況でも、痛みを訴えて中には大騒ぎをされる患者さんがいらっしゃいます。

麻酔の進歩

検査時の痛みに関する対応は日進月歩です。麻酔には鎮静薬、麻薬系鎮痛薬など多彩なものが使われています。麻酔薬の種類にもよりますが、副作用として呼吸抑制、せん妄(わけがわからなくなり、暴れたりすること)、覚醒遅延(さめが悪いこと)、麻酔薬アレルギーなど一定のリスクを伴います。そのため、以前は日本では麻酔を行わない病院も多く、とくに挿入が困難で痛がる患者さんだけに麻酔が行われることが一般的でした。しかし、最近では、希望すればすべての患者さんに麻酔下で内視鏡検査を行う病院・クリニックが増加しています。

術者・患者としての私の個人的経験

私は20代の頃より術者として大腸内視鏡検査を行って来ました。前述した検査技術の進歩とともに、ループ法、軸保持短縮法、無送気法と私の挿入技術も進歩しました。痛くない大腸内視鏡検査のコツは、押さずに腸を短縮して入れることに尽きますが、やはり患者さんによっては、検査中に部分的に押して挿入しなければならない場合があります。押すときは「押すからちょっと痛いかもしれません」と断って挿入していました。自分では、かなりスムーズに挿入できるようになったと自負していました。

私がこの検査を初めて患者として受けたのは40代後半になってからでした。初めての大腸内視鏡検査は自分が勤めていたクリニックで、達人の院長先生にお願いし、無麻酔で受けました。短時間で検査は終了しましたが、この「押すからちょっと痛いかもしれません」が、結構痛いことを初めて知りました。その後しばらく、検査医として、この、「ちょっと押す」という行為ができなくなり、スランプに陥ったことを覚えています。

その後、違う先生にもやってもらいましたが、私は自分の横行結腸(大腸の一部)が結構長いことを知り、挿入の際に「ちょっと押す」ことが避けられないことを知りました。つまり、上手な先生にやってもらっても、私には、大腸内視鏡検査は決して楽な検査ではありませんでした。ある時、近所のクリニックの先生が基本的に全例に麻酔下で大腸内視鏡検査を行っていることを知り、ためしに麻酔下でやってもらうことにしました。「これから麻酔しますから」という声を聞いたか聞かないか、ふと目を覚ましたらもう検査は終わっていました。「こんな楽な方法があったのか!」と本当に驚きました。その後は、「麻酔下」の一択になりました。

エッセンス

  1. 絶対に痛い思いをしたくない方は、はじめから麻酔下で検査を受けることをお奨めします。本当に楽です。ただし、麻酔のリスクについては、よく説明を受け、納得した上で受ける必要があります。検査中に何が行われているか、知らないと気が済まない方にはあまり向きません。
  2. 麻酔が怖い、リスクが嫌だという方、検査の様子を自分で確認したい方は、まずは、無麻酔で検査を受けられたらと思います。それで、とくに痛みが許容範囲内であった方は、その後も無麻酔で検査をお受けになればよいと思います。
  3. 最初の検査でかなり痛い思いをされた方は、医師の技術が未熟である場合(しばらく苦しい思いをした後に、上級医に交代したら意外とあっさり入った場合など)を除けば、ご自身の大腸が挿入しにくいタイプか、痛みに過敏な方である場合が考えられます。次回からは麻酔を希望されるのがよいと思います。
  4. 下剤や腸管洗浄液による前処置が良好に行われているかどうかは挿入のしやすさと検査の質に大きく影響を与えますので、指示、説明書にしたがってしっかり行うことがとても重要です。

当院の消化器内科では、催眠鎮静薬(ミダゾラム)と鎮痛薬(塩酸ペチジン)を用いた麻酔による無痛大腸内視鏡検査を行っておりますので、興味のある方は以下のリンクをクリックしてください。

院長 橋口陽二郎

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