最新の肥満治療

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わが国おいては、肥満症の治療として保険収載されていた医薬品は、「マジンドール(サノレックス」のみであり、使用できる範囲や量などが限られていました。しかしながら、2024年2月に、約30年ぶりに待望の新しい肥満治療薬「セマグルチド(ウゴービ」が使用可能となり、実臨床への期待が高まっています。

もともとこの「セマグルチド(ウゴービ)」は、2型糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬として使用されていたものを、その最大用量を増やして新たに肥満症へ応用・転用した治療薬で、週に1回投与の注射で、脳に働いて食欲を抑える効果や胃の動きを抑える効果(満腹感を得る)があります。日本人を対象とした治験では、生活習慣を改善しながら使うことで約10%以上の体重減少効果が報告されています。ただし、吐き気や嘔吐、下痢や便秘など特徴的な胃腸障害の副作用があり、その点を理解する必要があります。

本来、この「セマグルチド(ウゴービ)」は、医師の診察のもと、保険診療として処方される肥満治療薬ですが、ネット販売、海外からの個人輸入や自由診療を通じて、「ダイエット薬」や「やせ薬」として取り引きされるケースが少なくありません。例えば、海外で承認されていても、日本人と外国人では体格や体質が違いますので、効果や副作用の程度も異なってきます。

また、そもそも医療機関で処方される薬は、医師がその人の健康状態を総合的に判断して用量や使い方を決めているものですので、自己判断で使うことは大変危険です。例えば、栄養失調・臓器障害(すい臓や甲状腺疾患など)や過度の食欲不振を起こすこともあり、さまざまな健康障害が懸念されます。ですので、誰でも「セマグルチド(ウゴービ)」の処方をできるわけではない点に注意が必要です。

「セマグルチド(ウゴービ)」の適応は『肥満症で、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合で、かつ①BMIが35kg/㎡以上、または②BMIが27kg/㎡以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合(2024年4月時点)』に限定されています。

一方、処方箋がなくても薬局で買える市販薬(ダイレクトOTC医薬品)として、「オルリスタット(アライ」が2024年4月に発売されました。

この薬はリパーゼ阻害薬と呼ばれ、消化管内で脂肪分解酵素のリパーゼの活性を阻害することにより、食事の際に摂取した脂質のへの吸収を抑制することによって体重減量効果が得られます。

使用対象は18歳以上で、腹囲が男性は85cm以上、女性は90cm以上、健康障害を合併していない人で生活習慣改善の取り組み(食事・運動療法)を行っている人(2024年4月時点)に限られ、運動や食事の生活習慣改善の取り組みに関して記録することが適応条件となり、日本肥満学会が監修した専用のeラーニング研修システムを修了した薬剤師が対面販売を行うことができます。副作用として下痢や便秘・放屁など消化器症状があり(治験では40%程度の発現頻度)、一部の併用薬に注意が必要となります。

現在、2型糖尿病の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬の経口薬(飲み薬)やその合剤(複数の有効成分を一つにした薬)を中心に、肥満症治療薬が続々と開発されており、肥満症治療薬の選択肢が今後ますます広がっていくことが期待されています。

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糖尿病・内分泌内科部長 岡田 健太

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1998年昭和大学医学部卒業。2004年昭和大学大学院博士課程修了。自治医科大学内分泌代謝科 准教授、岩手医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 特任教授を経て、...

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