禁煙のコツ②―喫煙の害と禁煙のメカニズム
禁煙の害と禁煙のメカニズム
喫煙の害:タバコには、3つの悪い成分が含まれています。
①一酸化炭素
昔、火災現場などで一酸化炭素中毒で亡くなるというニュースを耳にしたことがあるかと思います。
その一酸化炭素を少量、タバコから吸っております。
この一酸化炭素は、赤血球にあるヘモグロビンという物質に酸素より250倍くっつきやすいという特徴があります。ゆえに喫煙者は絶えず体の組織が少し低酸素状態になっております。
それが長く続くと、脳・心臓・骨・皮膚を含んだ各臓器に障害が来たり、早く老化したりすることが予想されます。
②タール
タバコの中には数千種類の化学物質と約70種類の発がん物質が含まれております。
発がん物質で癌細胞が出現しても、若いうちは免疫細胞により駆逐される可能性が高いのかもしれませんが、年を取るにつれ免疫力が低下すると発がん物質が癌細胞を作る力の方が上回り、臨床的に癌が発見される可能性が高くなると予想されます。
禁煙後、癌になるリスクは何年続くのか明確なエビデンスはありませんが、一般的には禁煙後少なくとも15年は各種の癌(肺癌や頭頚部癌だけでなく、一般的な胃癌や大腸癌も喫煙で腺癌の細胞が増えると言われております)が出来ていないか毎年行政からお知らせが来る各がん検診を受けるのを禁煙外来に来られる患者さん方にはお勧めしております。
③ニコチン
冠動脈を狭くして狭心症や心筋梗塞を起こすリスクを高めると言われております。また、このニコチンがタバコを止められなくしている物質と言われております。
禁煙のメカニズム
タバコを吸うと、ニコチンが数秒で中脳にあるニコチン受容体にくっつきます。
ニコチンがニコチン受容体にくっつくと、脳の中にドーパミンが放出されます。
このドーパミンは快楽物質と言われております。
特に体全体を気持ちよくするというよりは、イライラが抑えられるように働きます。
タバコを吸うのをやめると、これらの物質は、1時間くらいで無くなり、イライラしてきます。
イライラしてきたので、またタバコを吸うと数秒でニコチンがニコチン受容体にくっつき、ドーパミンが放出されてイライラが落ち着くという回路が出来上がります。
ニコチン依存症の方は、この回路が出来上がってしまっているので、なかなか禁煙するのが難しいといわれております。
ニコチンの依存度
ニコチン依存症は、ニコチン依存症スクリーニングテストという10個の問診で簡単に診断することが出来ます(ここでは割愛します)。
どれくらい依存度が強いかというと、カフェイン<モルヒネ<<<コカイン<ニコチンといわれており、覚せい剤のコカインより強いといわれております。
ゆえに、禁煙外来で禁煙補助薬を使用しつつ、先程の回路を断ち切る(タバコを吸わなくてもイライラしないようになる)必要がありますが、自力で成功される方も多いです。
身体的依存と心理的依存
身体的依存というのは左記の回路が出来上がってしまった方のことをいいます。
ただ、禁煙治療を始めて、左記の回路を断ち切るのに成功しても、今までの習慣により、何か口寂しくて吸いたくなることがあります(起床時や食後、仕事が一段落した後など)。
こういうのを心理的依存といいます。
心理的依存が出現した場合は、吸いたいという「衝動」は3分で治まるといわれておりますので、3分間違うことをするのがよいといわれております(ガムをかむ、はみがきする、水を飲む、秒針数える、スマホゲームする、ひたすら経過を待つなど)。