「ロボット手術って本当にいいの?最新の研究でわかった“直腸がん手術”の新常識」

がんの手術といえば、これまで「お腹を開ける開腹手術」や「小さな穴からカメラで行う腹腔鏡手術」が一般的でした。最近では「ロボット支援下手術(ロボット手術)」という方法も広がってきています。
大森日赤では、昨年度は直腸癌の78%をロボット手術、22%を腹腔鏡手術で行いました(開腹手術は0%)。
でも、「ロボットって安全なの?ほんとに効果あるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。
そんな中、今年の4月に、「日本全国の約2万8000人の直腸がん患者さんのデータ」を使った、とても大きな研究の結果が論文として発表され、ロボット手術の実力がはっきりと示されました。
この研究は、臨床試験ではなく、リアルワールドデータ(現実世界のデータ)の分析と呼ばれる手法によるもので、実際に日本で直腸癌の治療を受けた多数の患者さんの治療結果をまとめて比較したものです。
研究からわかったこと
この研究では、以下の3つの方法を比べました:
🟠 開腹手術(昔ながらの方法):傷が大きい
🔵 腹腔鏡手術(小さな穴で行うカメラ手術):傷が小さい
🟢 ロボット手術(医師がロボットを操作して行う最新手術):傷が小さい
結果は驚きでした。
ロボット手術がもっとも優れていたポイント:
- 術後の合併症(体調トラブル)が少ない
- 入院日数が短い
- 術後の死亡率が一番低い
- がんの再発が少ない
- 5年後に無再発で生きている人が最も多い
- 5年後に生きている人が最も多い
なんと、「ロボット手術を受けた人の95%が5年後も生存していた」というデータが出ました(もちろん、再発した患者さんには抗がん剤などによる追加治療が行われたことによる結果であって、手術だけで95%の患者さんが治った。という意味ではありません)。
つまりどういうこと?
ロボット手術は、手術中に「細かく、やさしく、確実に」体の中を操作できるので、がんをしっかり取れて、体へのダメージも少なく済むと考えられています。
さらに、この研究結果は、「ロボット手術は安全で予後に対する効果も高い」ということを、多くの実際の患者さんのデータから証明した形になっています。
*とはいえ、すべての人にロボット手術が向いているとは限りません
ロボット手術はとても有望な方法ですが、誰にでも実施できるわけではありません。また、手術の内容や病院の設備、担当医の経験なども関係してきます。
もし「がんの手術でロボットも選べる」と言われたら、この最新研究を参考にしながら、納得いくまで医師と相談してみてください。
まとめ
- 日本の直腸癌手術を受けた2.8万人の大規模データで、「ロボット手術が最も成績が良い」という結果がでました。
- 合併症も少なく、5年後の生存率も最高(95%)でした。
- ロボット手術は、これからの新しい“標準治療”になるかもしれません
引用文献
Short- and Long-Term Outcomes of Open, Laparoscopic, and Robot-Assisted Surgery for Rectal Cancer, Annals of Gastroenterological Surgery. Marie Hanaoka et al.
文献へのリンク(英語の論文です)
Annals of Gastroenterological Surgery, 2025; 0:1–12