ロボットを使った前立腺癌手術の患者さんへのメリット

トピック

大森赤十字病院にも手術用ロボット(ダ・ヴィンチ サージカルシステム)が導入されました。泌尿器科では、今年4月より、前立腺がんに対して、ロボット支援下前立腺全摘術を開始しました。これは、最先端の医療技術を駆使した手術方法であり、患者さんに多くのメリットを提供します。この手術方法の利点をわかりやすく説明します。

(1)小さな切開で済む

ロボット支援下手術では、手術を行うための切開が非常に小さくて済みます。これにより、以下のメリットがあります。

  • 痛みが少ない:切開が小さいため、手術後の痛みが軽減されます。
  • 回復が早い:傷が小さいので、回復も早くなり、早く日常生活に戻ることができます。
  • 感染リスクが低い:傷が小さいため、感染のリスクも低くなります。

(2)精密な手術が可能

ロボットのアームは非常に細かい動きが可能で、人間の手では難しい精密な操作ができます。

  • 腫瘍の除去が正確:がん細胞をできるだけ完全に取り除くことができます。
  • 周囲の組織を守る:前立腺の周りには重要な神経や血管がたくさんありますが、ロボットの精密な操作により、これらの重要な部分を傷つけずに手術が行えます。
ロボットを使った前立腺癌手術の患者さんへのメリット

(3)術後の生活の質の向上

ロボット支援手術は、術後の生活の質(QOL)を高める効果があります。

  • 尿失禁のリスクが低い:前立腺の周りの筋肉や神経を温存することで、尿失禁のリスクが減少します 。

(4)入院期間の短縮

病院滞在期間の短縮:確実な尿路再建が可能となるため、カテーテル抜去の時期が早くなり、早く自宅に戻ることができます。

(5)3D(3次元)視覚と拡大画像

ロボット手術では、カメラを使って3Dで拡大された画像を見ながら手術を行います。

  • 視認性が高い:医師は患部を詳細に確認できるため、より正確な手術が可能です。術者 だけでなく、助手、看護師、臨床工学技士等手術室にいる全員で手術の進行を確認することができます。
  • 操作性が高い:拡大画像により、微細な部分まで確認しながら操作できるため、リスクを最小限に抑えられます。

≪エッセンス≫

前立腺癌に対するロボット手術は、従来の手術に比べて多くの利点があります。小さな切開で済み、精密な手術が可能であり、術後の生活の質を向上させる効果があります。

また、病院滞在期間の短縮、3D視覚と拡大画像による高い視認性と操作性も大きなメリットです。体への負担が少なくて済むため、従来では手術の適応からは外れてしまう症例でも手術が可能となり、癌の治療成績の向上に大きく貢献しています 。

これらのメリットにより、ロボット支援下前立腺全摘術は、多くの患者さんにとって魅力的な選択肢となっています。しかし、患者さんの個々の状況に応じて、医師と相談し最適な治療法を選択することが何より重要です。

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泌尿器科副部長 浅野桐子

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