赤十字病院なのに、赤十字が使えない?― アイキャッチ画像から知った、赤十字マークの意外な重み ―
先日、トピック記事「救急外来から帰宅。その後が大事!」のためにアイキャッチ画像を作りました。ところが、出来上がった画像を見た広報係から、「赤い十字単体では使えないので、白抜きにするなどしてください」と言われました。それで、ブログ記事の救急外来のドアのマークは白抜きの十字に変更しました。
一瞬、妙な気分になりました。ここは赤十字病院です。それなのに、赤十字を使うのをためらうのか――。「赤十字病院が赤十字を使えないなんて、少しおかしくないか」と思ったのです。
ところが、調べてみると話は逆でした。 赤十字病院だから赤十字を使えないのではありません。赤十字病院だからこそ、赤十字を“ただのデザイン”として気軽に扱ってはいけないのです。
赤十字は「病院のマーク」ではない
日本では赤い十字を見ると、病院、救急、医療を連想する人が多いでしょう。しかし赤十字標章の本来の意味は、単なる医療の目印ではありません。赤十字は国際法と国内法によって規定されており、日本赤十字社のガイドラインは、赤十字標章の使用を大きく「保護の標章」と「表示の標章」の二つに分けています。
「保護の標章」は、武力紛争時に傷病者や救護要員、施設などを保護するためのもの。一方、「表示の標章」は、平時に赤十字社の活動や施設などが赤十字に関係することを示すものです。つまり、あのシンプルな赤い十字には、私たちが普段想像する以上に重い意味が載っています。

図1 ガイドラインが示す「保護の標章」と「表示の標章」(日本赤十字社資料より)
「うちのマークだから自由に」は通用しない
さらに面白いのは、日本赤十字社自身が、シンボルマークの形、色、周囲の余白、最小サイズ、施設名との組み合わせ方まで細かく定めていることです。赤十字の形を変える、影をつける、別の図形と組み合わせる、規定された余白を守らない――そうした使い方には明確なルールがあります。
考えてみれば当然です。企業のロゴでさえブランド管理があります。まして赤十字は、国際的に意味を共有する特別な標章です。「ちょっと格好よくしてみました」が許されにくいのは、むしろ当然なのでしょう。

図2 ガイドラインに示されたシンボルマークの誤用例。意外なほど細かい。(日本赤十字社資料より)
では、赤十字病院でも使えないのか?
ここが今回いちばん面白かったところです。 ガイドラインを読むと、使用できる日本赤十字社の組織が、ガイドラインに従って使う場合は、原則としてその都度の相談や申請は不要とされています。一方、ガイドラインだけでは判断できないデザインなどについては、本部の広報室への相談が示されています。
つまり、「赤十字病院なのに赤十字を使ってはいけない」という話ではありません。正確には、「赤十字病院であっても、赤十字を好き勝手に加工して使ってよいわけではない」ということです。

図3 ガイドラインFAQ。「ガイドラインに則った使用」と「判断に迷うデザイン」を分けている。(日本赤十字社資料より)
広報係の一言から、赤十字の意味を考えた
ですから、今回の指摘は、結果としてなかなか良いきっかけになりました。白抜きの十字に差し替えれば、その場の問題は簡単に解決します。しかし「なぜ赤十字ではいけないのだろう」と立ち止まったことで、普段あまりに身近で、かえって意識していなかった赤十字マークの意味を考えることになりました。
赤十字は、私たちの病院の“飾り”ではありません。 戦場で人を守り、災害の現場で救護活動を示し、平時には赤十字の活動への信頼を背負う標章です。
そう考えると、「赤十字病院なのだから自由に赤十字を使わせてくれ」という最初の感想は、少しだけ逆だったのかもしれません。
赤十字病院だからこそ、赤十字を大切に使う。
たった一枚のアイキャッチ画像から、そんな当たり前で、しかし少し意外なことを学びました。次に赤十字マークを見かけたときには、皆さんも少しだけ、その赤い十字の向こう側にある歴史と意味を思い出していただければと思います。
参考:日本赤十字社『日本赤十字社シンボルマーク使用ガイドライン Ver.2』



