• HOME
  • HOME
  • トピック
  • 顔面・声帯の神経を守りながら手術するために ―唾液腺腫瘍・甲状腺腫瘍の手術―

顔面・声帯の神経を守りながら手術するために ―唾液腺腫瘍・甲状腺腫瘍の手術―

トピック

この度術中神経モニタリングシステムNIM Vitalを購入いたしましたのでご紹介させていただきます。

図:術中神経モニタリングシステム「NIM Vital」
出典:Medtronic社「NIM Vital」製品ページ(2026年10月閲覧)

当院の耳鼻咽喉科では久しく唾液腺腫瘍や甲状腺腫瘍等の手術は行ってはいませんでしたが、私が昨年9月に赴任して以来これら疾患についても手術を開始しております。唾液腺腫瘍と甲状腺腫瘍の手術に際しては一般的に術中の神経モニタリングが行われており、甲状腺腫瘍に関しては甲状腺腫瘍診療ガイドラインにもその有用性が記載されております。  

唾液腺腫瘍においては、特に耳下腺腫瘍手術では術後の顔面神経麻痺が最も重要な合併症となります。耳下腺内には顔面神経が走行しています。耳下腺腫瘍の摘出では単に腫瘍を摘出するだけでなく、顔面神経を温存し麻痺を残さず切除することが術後のQOLに大きく影響します。頭頸部癌診療ガイドラインでは耳下腺癌である場合でも、術前に顔面神経麻痺がない場合は術中所見により顔面神経を温存する選択肢が示されています。

また、甲状腺手術においても反回神経の温存が術後のQOLに影響します。反回神経とは声帯を動かす神経で、これが損傷されると一側の場合は嗄声、両側の場合はそれに加えて呼吸困難が出現する可能性があります。癌に関しては、甲状腺の場合は術前に嗄声などの反回神経麻痺の症状がなくても合併切除する可能性はあり得ますが、可能な限り機能を温存するよう努めます。

こうした神経の術中モニタリングに用いるのが術中神経モニタリングシステムNIM Vitalです。術中神経に触れた場合は音声とモニターの波形で警告があり術中の不用意な神経損傷を避けるだけではなく、刺激用のプローブで神経に触れることでモニタリング中の神経を確認することができます。

当科では昨年より手術を行うにあたりこの術中神経モニタリングシステムをレンタルで使用しておりましたが、購入したことにより当院備品としていつでも使用できるようになりました。等システムを使用する疾患としましては耳下腺腫瘍、甲状腺腫瘍、副甲状腺手術などがあります。私は頭頸部がん専門医として頭頸部癌を専門領域としておりますが、唾液腺良性疾患についても専門領域としております。特に唾液腺管内視鏡手術については東京女子医大勤務時より多数の経験を有しております。耳下腺腫瘍以外の唾液腺疾患でも術中神経モニタリングシステムを使用することはありますので、その際も安全に手術を行うことが可能となりました。現時点で唾液腺管内視鏡は当院で所有していないため手術の際はレンタルで行うことになりますが、今後は私の専門性を生かせるよう購入も検討したいと考えております。最後に私が筆頭著者として発表した唾液腺疾患に関する学術論文のリストも記載しておきますので参考にしていただければと思います。

1) Kondo N, et al.  : The landmark for removal of sialoliths using sialendoscopy alone in parotid gland sialolithiasis. Auris nasusu larynx, 45:306-10, 2018.
2)Kondo N, et al. : Treatment outcomes of sialendoscopy for submandibular gland sialolithiasis: the minor axis of the sialolith is a regulative factor for the removal of sialoliths in the hilum of the submandibular gland using sialendoscopy alone. Auris Nasusu Larynx, 45:772-6, 2018.
3)Kondo N, et al. : Diagnostic and treatment effects of sialendoscopy for patients with swelling of the parotid gland when sialoliths are undetected with computed tomography. Auris Nasusu Larynx, 45:880-4, 2018.
4)近藤律男,吉原俊雄:唾石の診断と内視鏡下摘出術.ENTONI,222: 18-24, 2018.
5)近藤律男,他:三期分割手術を行った両側耳下腺周囲木村病例.日本頭頸部外科学会, 35:263-8, 2025.

耳鼻咽喉科副部長 近藤律男

3,063 views

プロフィール

関連記事一覧