大腸がんの手術では、なぜ長く腸を取るの?
「がんはここだけなのに、そんなに長く腸を取るのですか?」 大腸がんの手術について説明していると、患者さんからよく聞かれます。
たとえば数cmの大腸がんでも、手術ではその部分だけをくり抜くように取るわけではありません。 私は患者さんには、 「だいたい病気からおよそ10cmずつ離して腸を取ります」 と説明することがよくあります。
そう聞くと、「そんなに取るの?」と思いますよね。 では、なぜがんよりずっと長く腸を取るのでしょうか。
目に見えるがんだけが、手術の対象ではありません
大腸の周りには「リンパ管」という細い通り道があり、その途中には「リンパ節」があります。 大腸がんが進行すると、がん細胞がリンパ管を通って、近くのリンパ節へ転移することがあります。
このリンパ節は、がんに栄養を運ぶ血管の走行に沿って、根元の方まで並んでいます。 そのため大腸がんの手術では、がんのある腸だけではなく、その腸につながる血管やリンパ節を含んだ「腸間膜」も根元から一緒に切除します。
つまり手術で考えているのは、 「がんから何cm離して切るか」だけではなく、**「根治(治癒)のためにどのリンパ節まで一緒に取る必要があるか」**ということなのです。
では、なぜ「10cm」くらいなの?
大腸がんの手術では、がんの位置や、それを栄養する血管、リンパ節の広がりを考えて、切除する範囲を決めます。 そのため、患者さんには 「がんから両側にだいたい10cmずつ離して取ります」 と説明すると、手術の範囲をイメージしてもらいやすくなります。
ただし、実際には「左右きっちり10cmを測って切る」という意味ではありません。 がんが大腸のどこにあるのか、どの血管がその部分を栄養しているのかによって、実際に切除する長さは変わります。 また、直腸がんでは肛門を残すための距離や術後の排便機能なども重要になるため、結腸がんとは少し考え方が異なります。
「がんだけを取る」のと「がんを治すために取る」のは違います
大腸がん手術の目的は、目に見えるがんを取り除くだけではありません。 目には見えないリンパ節転移の可能性まで考えて、がんのある腸と、その周囲のリンパ節を含む腸間膜を適切な範囲で一緒に切除します。
ですから、 「がんは小さいのに、どうしてこんなに長く腸を取るの?」 という疑問への答えは、 「がんそのものだけではなく、がんが広がる可能性のあるリンパ節まで一緒に取るためです」 となります。
大腸がんの手術では、目に見えるがんの大きさだけではなく、その先にあるかもしれない“がんの通り道”まで考えて、切除する範囲を決めているのです。
参考
大腸癌研究会編『大腸癌治療ガイドライン 医師用 2026年版』


