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緩和ケア病棟の上手な利用の仕方 〜その1 緩和ケア病棟へのレスパイト入院〜

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本年1月から緩和ケア病棟が始まっています。緩和ケア病棟は最期の時に入院するところ、自宅ですごしていてギリギリになってから入院するところというイメージがないでしょうか。確かに緩和ケア病棟では患者さんの最期の時を看取ることが重要な働きの一つです。しかし、それ以外にも緩和ケア病棟を上手に利用していただくことで患者さんがより良い時間を過ごせることがあります。そんな上手な利用法をこのブログでお伝えしていきたいと思っています。今回は緩和ケア病棟でのレスパイト入院についてです。

緩和ケア病棟でのレスパイト入院は単に介護者が休息するための入院ではありません。

急なADLの低下が進む時期には、必要な介護の方法や手段が変わっていきます。一般に十分な介護経験のない主介護者にとっても、介護されることになれていない患者さんにとっても、なれない介護で疲弊しやすいのがこの時期です。

例えば老老介護状態の患者さんがいたとします。がんに伴う苦痛症状は出現していないものの患者さんのADLが低下しつつある時期には、主介護者への負担が増していきます。高齢であることから体力の少しの変化で立ち上がりやトイレ移動などに介助が必要になってきますが、患者さんが体の変化を受け入れきれず介助されることにも慣れていない場合には、余計な力が入ってしまい、介助する側もうまく介助できず疲弊してしまうことが往々にしてみられます。また、高齢者によくあることですが、自宅に他人を入れたがらず、訪問看護やヘルパーの導入を臨まず自分たちでなんとかしようと頑張ってしまい、結果疲弊してしまうことも珍しいことではありません。

適切な介助の方法を知り、患者さんも介助に上手に委ねることができれば、老老介護であってもまだ自宅で過ごすことが可能な時期に無理をしてしまうことで身体的にも精神的に疲弊してしまうと、その後の自宅療養が難しくなってしまったり、最期を自宅で迎えられたとしても良い思い出が少なくなってしまうことが懸念されます。

このような時期に一旦緩和ケア病棟に入院していただきますと、患者さんは的確な介護・介助を病棟看護師から受けることにより、安楽に過ごせるための介護手段を実際に経験していただけますし、主介護者にとっては適切な介護・介助の方法を知り学ぶことにより自宅に帰ってからの介護に自信が持てるようになります。

多くの患者さんは看取りが近くなってきますとベッド上のADLとなり、食事も必要なくなってきます。このような変化に合わせて介護負担は軽くなってきます。主介護者にとっても介護負担が減ることで、その後の期間は身体的な苦痛症状が強くなければ自宅で過ごすことが容易になります。 

緩和ケア病棟の上手な利用の仕方 挿絵

自宅で看取った経験のない方にとっては、最期は自宅で迎えたいけれどもイメージ的にそれは無理と思ってしまいがちです。そして介護負担が増えてきた時期に無理をして限界を感じてしまうことでそのイメージがより強固になってしまいます。その後に控えている介護負担が軽くなり、無理のない介護をおこないつつ自宅で最期の時を迎えられるよう、その前の一番大変な時期を緩和ケア病棟で過ごしていただき自宅介護の立て直しを図っていただくことも緩和ケア病棟の大事な働きと思っています。

かかりつけの患者さんで、介護負担が強くなり自宅介護がうまくいかなくなってきている様子を感じられましたら、緩和ケア病棟への一時入院をご検討ください。

緩和ケア内科部長 茅根義和

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