離床について~急性期リハビリテーションの第一歩~

トピック

一般にリハビリテーションと聞くと、「病気や外傷の手術や治療が終わった後から/ゆっくりと」開始されるイメージが持たれていますが、近年はそうではなくて、急性期の早期からのリハビリテーションが重視されています。

特に、年齢が高かったり複数の病気やケガが重なったりすると、手術や薬剤の治療が終了しても生活にそのまま戻ることが難しい状態に陥ることがままあります。「手術は計画通り終わった」あるいは「検査データは回復した」患者さんでも、現実には「元通りの日常生活に戻れず」自宅への退院が難しくなるケースは少なくありません。

そのような場合、脳卒中や骨折などの症例に限らず心不全や内臓疾患の患者さんであっても、家庭生活あるいは職務復帰を目指してリハビリテーションをおこなう必要があります。

そして、治療後からではなく、「入院の早期から/手術の前から」リハビリテーションを介入することが望ましいのです。

「寝たきり/寝かせきり」という言葉を御存じだと思いますが、入院生活では、居場所は病室に限られ、普段なら行っていたような身体を動かす機会は殆どありません。さらに病気や外傷の影響・治療上の制約が加わって、24時間の殆どをベッドの上で過ごすことになりかねません。

病気や外傷があり、術後に創部が癒合していない段階や、点滴など身体にいろいろな治療器具が着いた状態で動くことには、不安もあり、危険を伴う場合もあります。

しかしながら、普段より運動量が減り、横になって過ごす時間が増えると、様々な弊害を来します。「筋肉量が減り、筋力が低下する」、「骨への荷重が減り、骨粗鬆症を招く」、「呼吸が浅く、痰が溜まりやすくなる」、「心臓の働きが低下しやすい」、「腸の動きが減り、便秘になる」、「床ずれが起きやすい」、さらには「せん妄や認知機能低下を来しやすい」、「睡眠障害を招く」こともあります。

これらのことが重なって「悪循環」も生じます。

必要なことは、治療に支障を来さないように安全に注意しつつ、身体を動かさないことによる弊害(これを廃用症候群といいます)を最小にすることなのです。

大森赤十字病院のリハビリテーション部門では、主治医から指示を受けてから出来るだけ早くリハビリテーションが介入できるよう、療法士は土曜日や祝日にもリハビリテーションを行っています。そして、ICUやHCUといった集中治療室に収容されている重症な方でも、医師や看護師と十分に連携してリハビリテーションを開始しています。

集中治療室の患者さんは、自分では起き上がれなかったり、意識も未だ十分には回復していない方もいますが、それでも療法士の介助のもとで、起こしてベッドの端にすわらせたり、支えながら立った姿勢にする訓練を始めます。これを「離床」と呼びます。

離床により、体幹を含めた筋肉活動を促し、骨に荷重を掛け、痰の喀出を促し、心臓の機能低下を防ぎ、腸の動きを促します。また、意識の回復・覚醒を促す効果もあります。

これは集中治療室以外の入院患者さんでも同様で、どのような患者さんでも「離床」は機能回復・障害克服を進めてゆくための「第一歩」にあたります。

看護や栄養サポートと併せて、リハビリテーションは患者さんの生活を取り戻すために、入院治療をサポートする役割があります。

大森赤十字病院のリハビリテーション部門は、急性期リハビリテーションの提供により、「最良・最短で住み慣れた地域に再び生き生きと暮らせるよう支援すること」を理念としています。どうぞ宜しくお願い致します。

リハビリテーション科部長 竹内壯介

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