がん予防に検診を活用してみませんか(シリーズ3/6)「3. がん検診には、デメリットもあります。」
日本で生涯に何らかのがんに罹患する人の割合は、今や2人に1人となっていると推計されています。がんは加齢に伴って発症しやすくなる、細胞の老化現象の一つとも言われていますが、生活習慣病としての側面も持っています。老化現象としてとらえると、がんにならない予防法は無いと言えますが、生活習慣病の一つと考えると、多少なりとも発症を押さえられる可能性がある、と考えることもできます。
そこで、がん予防検診について6回にわけて解説しています。今回は第3回を届けします。
3. がん検診には、デメリットもあります。
どんな検査にも限界があり、検査で異常なし(陰性)だけど病気にかかっている、という場合もあれば、検査では異常(陽性)だけれど病気にはかかっていない、という検査結果が存在します。前者は偽陰性、後者は偽陽性といい、これらが少ない検査が良い検査ですが、残念ながら、これらがゼロである検査は存在しません。
特に、腫瘍マーカーは、初期のがんでは正常値を示し、進行して初めて数値が上がってくるものが多く、がんが疑われる他の結果があっても腫瘍マーカーが陰性であることはよく見られます。
そのため、保険医療の枠内では、腫瘍マーカーは画像診断等でがんが疑われた場合の補助診断や、がんの進行を見るための指標、治療後の経過観察などに用いられるにとどまり、通常はがんの診断に使いません。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAについては、例外的にスクリーニングとして用いられることが許されています。
そのため、すでに自覚症状があった方がもし先に医療機関を受診していたら、早期に診断がついて早期に治療を開始できたはずが、先に受けてしまったがん検診で結果が陰性だったがために、医療機関を受診することが遅れて、診断や治療が遅れてしまう、というデメリットがあります。検診結果には、「がんにかかっていない、ということを示してはいません」というような但し書きがついているはずですが、そのような細かい所を読まずに、結果だけを信頼してしまうことは危険です。
逆に、がんにかかっていない(あるいは他のどの検査にもひっかからない程度のごく初期)にも関わらず、検査で陽性になってしまい、不必要な精密検査を受けることになったり、がんにかかったという不安による精神的社会的負担、QOLの低下をこうむることもあります。一般検診も含め、検診では、病気にかかっていたとわかった時の心構え、を準備した上で受ける必要があります。
検診にともなう合併症としては、採血に伴う腕の神経損傷(0.01~0.05%)、胃カメラに伴う出血・先行など(約0.01%)などと、ごく稀ではありますが、ゼロではありません。CTについては、人間ドックで用いられる低線量CTであれば、人体への影響は、検査可能なレベルでは検出できないほど小さいと言われています。
検診の結果、異常がみつかって、精密検査となった場合の合併症は、重篤なものの確率は低いですが、一過性の発熱・疼痛などの軽い合併症は1%以下~数%程度に確率が上がります。
残り寿命に比べて、臨床的に意味のないがんを診断され、治療されるのもデメリットでしょうか。
―続く―